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業務改善コンサルを解体しよう “Ranabase開発秘話”

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業務改善コンサルを解体しよう “Ranabase開発秘話”

私達が今更、BPMツールを自社開発しようと思い立った経緯と今後の構想を公開します。

私達が去ると業務フローが陳腐化する

私達はBPM (ビジネスプロセスマネジメント) を専門とするコンサルティング部隊です。ARIS (アリス) というBPMツールをご存知でしょうか。グローバルではそこそこのシェアがあるハイエンドなドイツ製のBPMツールで、1990年代初期に世界で初めてBPMツールを名乗ったとされています。当初はSAPにバンドルされ、リファレンスモデル (SAPが想定する標準業務フロー) とともに普及した経緯がありますので、初期のSAP導入に関わったことがある皆さんは聞いたことがあるかもしれませんね。ドイツがお膝元で、ダイムラー、BMW、VW、ポルシェ、シーメンス、ルフトハンザ、ドイツ銀行、ドイツポスト等など、みな元はARISユーザーです。ARISの元々の製造元をIDS Scheer AG (アイディエス・シェアー)社といいますが、私達は2000年頃からそこの日本法人社員でした。(その後、買収や事業移管などいろいろあり、今はユニリタの一部門です) 日本にARISを持ち込み、始めはどう使うのかわかりませんでしたが、ドイツ企業の先行事例に学びながら、徐々に国内のいろいろなお客様にBPMの適用をご指南させて頂けるようになりました。業務プロセスの可視化、効率化、標準化、それに基づく基幹システムの再構築など。この経験は貴重なものでしたが、どうしても解決できない課題がありました。それは、私達が契約満了で去った後、お客様先に納めてきた業務フローがその後二度と更新されない、という事です。業務フローを描く技術や役割を移管しなかった、当時のお客様側のコアメンバーが異動してしまった、推進者であった役員が退任され、維持管理のための予算が付かなくなった等、理由は様々ですが、だいたい5〜6年で当時の業務フローは使われなくなり、IT部門のトップが変わる機会にあわせて「ARISの保守を解約させて」と言われます。なぜそうなるのか? 業務フロー(ビジネスプロセス)が組織の日常に必要とされていないからだ、というのが我々がたどり着いた結論です。もっと”活きた業務フロー”をお客様自身が描き、現場に定着化させ、改善のために日々見直すという姿を実現しないと。ビジネスプロセス“マネジメント”にならない。

 

レーシングカート場を作ろう

世間のグローバルBPMツールは高いです。ARISも一式10,000千円/年〜というレンジになります。ドイツに何百人という保守・開発部隊がおり、これを30年間維持してきたソフトウェアメーカーは、その投資を回収しようとする訳ですが、BPM市場は比較的狭く必然的にツールの単価は高く設定せざるを得ない。ツールとしての競争力を維持するために、機能はどんどん追加されてきています。業務フローをベースにしたSimulation、システム実装への連携、稼働中のシステムからデータを抽出して業務フローを逆に生成する機能など。これらはうまく利用し、正しく運用すれば、お客様の投資を上回る成果を得ることはできます。しかしそれはツールだけから生み出される価値ではありません。むしろお客様が自分達で頑張った分の成果であり、お客様が描いた業務フロー自体が持つ価値です。

ARIS等のハイエンドなBPMツールを車に喩えると、”フォーミュラーカー”です。ブン回すにはプロのメカニック、ドライバーが必要になりますし、そのチーム運営を維持するためのスポンサーが必要です。レースで勝つ (つまりグローバルビジネスで勝つ) には、いずれは”フォーミュラーカー”を乗りこなさなければ勝負にならないとは思います。事実、そういうグローバル企業は存在しますので。しかし残念ながらほとんどの日本企業にとって、”フォーミュラーカー”に飛び乗るのはまだ早いと言わざるを得ません。下地が出来ていない。そこで、私達は”レーシングカート場”を作ろうと考えました。カートを提供するだけではなく、走り方を練習する”場”も含めて。Ranabaseはそのようなコンセプトで作り始めました。

(車好きの方以外には、わかりにくい喩えだったかもしれません。要するに、プロ向けの道具に飛びつく前に基礎をしっかり固める必要がありますが、それに特化した道具や教育サービスが少ないので、そこを狙ってみようという事です。)

 

改善ノウハウを分かち合う

現時点のRanabaseは「エクセルで業務フローを書くよりは幾分かマシ」といったレベルだと認識しています。使い勝手や機能面でまだまだ課題がありますので継続的に改善してゆきますが、お客様自身が価値のある業務フローを描けるようになること、それを日々の改善に活かせるようになること、そのためのノウハウをこのプラットフォーム上で共有できるようにすること、ここにフォーカスしてゆきたいと考えています。ARIS等のように多機能にすることは考えていません。Simulationしたい、実装につなげたい、モニタリングやリバースエンジニアリングをしてITシステムも含めた継続的な改善サイクルを回したい、という成熟度に達したら是非、より上位のBPMツールに移行して下さい。(作り上げたコンテンツが無駄にならないように、移行ツールもご用意する予定です)

 

こちらはRanabaseの現時点の概念モデルです。スケッチというのが業務フロー、キャンバスはその集合です。スケッチはビジネスプロセスを構成する組織、業務、ルール、データ、システム等、様々な要素(クリップ)どうしの関係として描かれます。このスケッチに対して気付きがあり、課題として認識され、施策が施され、スケッチの改訂に繋がってゆきます。組織の業務改善の様子をモデル化し、データとして蓄積してゆこうという訳です。類似する業務には類似する課題があります。類似する課題には類似する施策があります。業務改善活動は企業毎、組織毎に秘密とされてきましたが、コンサルタントという職業をやってきた経験からすると、どこも似たり寄ったりです。ある企業で得たノウハウを別の企業に紹介する”ミツバチコンサル” (自分達のことをそう呼び、それはそれで一定の価値があると考えていますが) は、上記のようなデータが蓄積され、適切なケースをリコメンデーションできるAIが作られれば、必要なくなるのではないか。そう思うからには、私達自身の古いビジネスモデルを解体し、このようなプラットフォームを介した新しいサービスビジネスを創り出したいと考えている所です。

 

 

執筆者情報:

冨樫 勝彦 (Togashi, Yoshihiko)

1972年生まれ 株式会社ユニリタ クラウドサービス事業本部 ビジネスイノベーション部 部長。Ranabaseプロダクトオーナー。大学卒業後ERP導入に従事、2000年にBPM(ビジネスプロセスマネジメント)のコンサルティングに転向し、国内へのBPM普及展開を推進。2019年からBPMツールの自社開発に着手、"BPMで日本を元気に!" をモットーとして、コンサルに頼らず組織が自ら継続的に業務プロセスを改善してゆくための方法論やノウハウをRanabaseのサービスに込め、BPM市場の裾野を広げる活動を続けています。

 

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