カエル塾

カエル塾

仕事を見える化し、
継続的に改善する方法を学ぶ

  1. TOP
  2. カエル塾
  3. コラム
  4. 現状ヒアリングのコツ

現状ヒアリングのコツ

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
現状ヒアリングのコツ

こんにちは。今回は業務モデリングを行う前提となる”現状ヒアリング”のやり方についてお話しします。

現状業務に関するドキュメントやマニュアル類がしっかり揃っていれば良いのですが、断片的な資料しかなかったり、少し昔に作られており現状はもう変わっている部分があったりすることが多いですよね。こういう場合には、業務改善の対象とする部署の方々を集めて、現状をヒアリングさせて頂く、ということになります。限られた時間の中で知りたいことを上手に聞き出すためには、ヒアリングの進め方を予めイメージして臨むことが必要です。ここでは、現状ヒアリングが初めての方があまり意識しないであろうポイントについてご紹介したいと思います。

意識したいポイント

業務改善を目的とするヒアリングでは、次の3点を聞き出すことを意識しましょう。

 

・ 主人公の 組織のミッション
・ 扱っている 主たる情報
・ 業務の 循環サイクル

 

後で業務フローを描くことを考えると、すぐに「まず何をしますか?」・「次にどうするんですか?」と、仕事の手順を聞き出すことに走りがちですが、それだけでは改善活動につながるヒントが得られません。手順を一つ一つ聞かれていると出席者側も尋問されているような気分になりがちです。現状ヒアリングでは手順を聞き出すことよりも、むしろ「悩み事の相談にのる」というスタンスで臨むとうまくゆきます。

組織のミッション

改善対象とする組織が、今何を最も問題と感じているのか、まず始めに、「あなた方の組織のミッションは何ですか?」と聞くことで引き出すことができます。営業なら「売上・利益・シェアなどを上げること」、生産なら「生産性を上げ、品質を維持することですよね?」と当たり前のことを投げかけてみて下さい。「それはそうなんだけど、実は今ね・・・」と言ってくれることを期待します。経営環境が変わってゆく中で、組織のミッションは実は一定ではありません。今どっちの方向へ向かおうとしているのか、最初に教えてもらえればラッキーです。

 

 

主たる情報

「今からお聞きする業務で皆さんが取り扱っている主たる情報って、何でしょうか?」これが次の問いかけです。見積業務であれば「見積」、サービスデスクの問合せ窓口であれば「インシデント」等が該当します。業務とは、何らかの情報を確定させる手続きです。何らかの依頼に対して情報を収集、分析、判断し、確定情報を回答します。この「主たる情報」を押さえると、その業務の始点/終点と、その過程でなすべき事が想像できます。例えば「見積書」には顧客、品目、数量、金額、納期、支払条件などの項目がありますよね。見積業務というのは、見積書の依頼を受ける事が始点、見積書を提示する事が終点です。その間には顧客の与信をチェックしたり、在庫や納期を確認したり、価格を設定し、値引きを承認したりしているはずだ、ということは、「情報」に含まれている項目を押さえれば想像がつく訳です。

 

 

業務の循環サイクル

3点目は、この人達は「どういう学習サイクルを回して賢くなろうとしているか」というポイントです。業務は必ず循環しています。やってみてうまく行った、またはうまく行かなかったという経験を次の機会に活かそうとします。この循環サイクル全体をカバーするように業務を可視化し、改善策を検討することが重要となります。一部分だけを見て小手先の改善を考えても、その組織の成果にはつながらない可能性が高いからです。見積業務を例にとると、見積依頼を受けてから、見積書を提示して、OKなら受注、NGなら失注、まだ協議の余地があるなら見積書の出し直しを行う。このサイクルの中だけで改善できることもありますし、もっと大きなサイクルに目を向けなければ根本的な処方箋にならないこともあります。対象組織がどんなレベルを狙っているかによって判断しましょう。

 

 

白板の使い方

さて、ヒアリングの場ではPCをプロジェクターで写して、あなたのメモを見せながら聞くのも良いですが、ホワイトボードを併用することをお勧めします。「組織のミッション」や「主たる情報」を聞いて、メモさせていただいた後は、是非立ち上がって白板の前に立って下さい。プロジェクタのケーブルは出席者側に渡して下さい。きっと参考になる資料等を見せてくれるでしょう。こちらが占有していたらその機会を失ってしまいます。

 

 

白板に立ったらまず、白板の上部に組織のレーンを描きます。真ん中に主人公の組織、左にお客様サイド、右側に社内関係部門を配置します。時間の流れは上から下です。「主たる情報」が把握できていれば、ここに描くべき業務の始点と終点が予めわかっています。見積業務の例では、始めは「見積依頼」、終わりは「見積書」ですね。白板の残りスペースを意識しながら、始点と終点の間にある情報の流れを埋めてゆきます。ここで、プロセスのステップを一つ一つ描いてしまうと、すぐにスペースが埋まって書ききれなくなりますので、白板では情報を格納する器を四角で書き、矢印で情報の流れを描いてゆきます。「見積依頼をもらったら、それは何に保存しますか?」・「社内に納期を確認する際、その情報はどこにありますか?」という具合です。自然に、情報の流れと、それを管理するシステムの存在がヒアリングできます。「ここで業務のサイクルが回っていますね」という事が確認できたら、一旦そこで完成です。このような白板が描けたら、業務フローは描けたも同然ですね。

 

悩み事の聞き取り

先のような白板が描けたら、参加者にこの範囲で感じている悩み事を聞いておきましょう。時間が許せば、付箋を配って悩み事を書いて貼っていただけると良いでしょう。貼っていただいた後、それぞれをご説明いただき、組織としての優先度も言っていただければ最高です。

 

 

2時間程度のヒアリングでこのくらいまで出来たら上々です。やってみないと上達しませんので、社内の身近なところにご協力いただいて練習して下さい。(縦割社会の日本企業では、別の部署の人に時間をもらうのも一苦労です。ヒアリングの目的、工数、日程を明確にするとともに、会社の文化に沿い、必要なら上長、役員間の合意を取り付け、仕事として参加していただくなど、根回しをお忘れなく。)

 

 

執筆者情報:

冨樫 勝彦 (Togashi, Yoshihiko)

1972年生まれ 株式会社ユニリタ クラウドサービス事業本部 ビジネスイノベーション部 部長。Ranabaseプロダクトオーナー。大学卒業後ERP導入に従事、2000年にBPM(ビジネスプロセスマネジメント)のコンサルティングに転向し、国内へのBPM普及展開を推進。2019年からBPMツールの自社開発に着手、"BPMで日本を元気に!" をモットーとして、コンサルに頼らず組織が自ら継続的に業務プロセスを改善してゆくための方法論やノウハウをRanabaseのサービスに込め、BPM市場の裾野を広げる活動を続けています。

 

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

サービスを
利用してみる

30日間無料で、スケッチ(図)を無制限で作成できる
「パーソナルプラン」をご利用いただけます。
この機会に、Ranabase(ラーナベース)で継続的な業務改善を始めてみませんか?

サービス紹介やお役立ち資料を無料でご活用いただけます